◆サイコロ賭博◆
 シャクニはクル族の王ドリタラーシュトラの妻、ガーンダーリーの弟であり、カウラヴァの100王子たちの伯父にあたる人物である。シャクニはサイコロ遊びの名人であり、100王子の長男ドゥリヨーダナにある計画を持ちかけた。それは、パーンダヴァの5王子の長男ユディシュティラをサイコロ賭博に誘い、賭けで打ち負かし、武器に頼ることなく全てのものを巻き上げてしまおうというものだった。盲目の王ドリタラーシュトラは乗り気ではなかったが、ユディシュティラに使者を出してサイコロ遊びに招待した。

 クシャトリア(武士階級)のしきたりでは、サイコロ遊びの招待は断ってはいけないことになっていた。また、ユディシュティラ自身、下手ではあったのだがサイコロ遊びが好きだった。ユディシュティラは弟と家来を連れてドゥリヨーダナとシャクニの待つ賭博場へ赴き、シャクニとサイコロ遊びを始めた。

 最初は宝石や金銀を賭け、ユディシュティラは連敗し、全てを失ってしまった。そこで今度は家来や軍隊を賭け、やがては領地までを賭けたが、やはりシャクニには勝てず、全てを失ってしまった。賭博はそれでも終わらず、ユディシュティラは弟たちをアルジュナやビーマといった弟たちまでも賭け始め、それをも失い、自分自身をも賭け、やはり負けてしまった。最後には妻のドウラパディーを賭けて敗れ、ついにユディシュティラはありとあらゆるものをシャクニに取り上げられてしまうことになってしまった。

 ドゥリヨーダナは大いに喜び、すぐに弟のドゥッシャーサナに命じてドウラパディーを賭博場に連れてくるように命じた。ドゥッシャーサナはドウラパディーの髪の毛をつかみ、賭博場まで引きずって来た。そして公衆の面前でドウラパディーの衣服を剥ぎ取り始めた。この破廉恥な行為に心を痛めた盲目の王ドリタラーシュトラは、賭け事で失った全てのものをユディシュティラに返すことを宣言し、パーンダヴァの5王子たちをインドラプラスタへ帰らせた。

 父王のこの行為に怒ったドゥリヨーダナは、再度サイコロ賭博にユディシュティラを招待することを無理に説得し、すぐに使者を出してユディシュティラたちを呼び戻した。ユディシュティラは皆が止めるのも聞かずにシャクニと再びサイコロ賭博をしてしまった。今度賭けられた条件は、「負けた方が兄弟と共に森に追放され、そこに12年間留まった後、13年目に誰にも正体を知られずに過ごさなければならない。誰かに正体を知られてしまった場合は、さらに12年間森に住まなければならない。」というものだった。そしてやはりユディシュティラはシャクニに負けてしまい、パーンダヴァの5王子は森へ追放されることになった。