◆魔法の池◆
 鹿がバラモンの火臼に角をひっかけて、そのまま火臼と共に走り去ってしまうという事件が起きた。火臼がなければ火を起こすことができず、祭祀をすることができなくなる。バラモンはパーンダヴァの5王子に助けを求めた。5王子は早速その鹿を追いかけたが、なかなか捕まえることができずにとうとう見失ってしまった。

 5王子は疲れきってその場に座り込んでしまった。みんな喉が渇いていたので、長男のユディシュティラは4男のナクラに命じて、近くにある池に水を汲みに行かせた。池に着くとナクラは早速水を飲もうとしたが、突然どこからともなく声がした。

「その水を飲む前に私の問いに答えよ。」

 ところがナクラはあまりにも喉が渇いていたので、その水を飲んでしまった。するとナクラはたちまちその場に倒れて死んでしまった。

 ナクラがなかなか帰ってこないので、ユディシュティラは今度は5男のサハデーヴァを池に行かせた。サハデーヴァは池のそばにナクラが倒れているのを見つけて驚いたが、まずは渇きを癒そうとして池の水を手にすくった。すると、また声がした。

「その水を飲む前に私の問いに答えよ。」

 サハデーヴァもナクラと同じようにこの警告を無視して水を飲んでしまったため、倒れてしまった。同じように、アルジュナやビーマも池の水を飲んで死んでしまい、二度と帰って来なかった。

 4人の兄弟が帰って来ないので、心配したユディシュティラは遂に自ら池に赴いた。するとアルジュナ、ビーマ、ナクラ、サハデーヴァが倒れて死んでいたので、嘆き悲しんだ。しかし、よく見ると彼らの身体には傷ひとつなく、安らかな顔をしている。不思議に思ったが、ユディシュティラも渇きに勝てずに池の水を飲もうとした。すると、また例の声がした。

「その水を飲む前に私の問いに答えよ。」

 その声を聞くと、ユディシュティラは弟たちの身に起こったことを察知し、水を飲むのを止め、質問に答えた。

「毎日太陽が輝くのは何のせいか?」
「それはブラフマンの力だ。」
「あらゆる危険から人間を救うものは何か?」
「それは勇気だ。」
「大地よりも頑丈なものは?」
「子供を産み、育てる母親だ。」
「空より高いものは?」
「父だ。」
「風より動きの速いものは?」
「心だ。」
「旅する者の助けとなる友は?」
「博識だ。」
「人間が死ぬとき、ついていくものは?」
「ダルマ(宗教的義務)だ。」
「幸福とは何か?」
「幸福とはよい行いの結果だ。」
「何を捨てたら、人は誰からも愛されるか?」
「高慢だ。」
「失うことによって喜びを産み出すものは?」
「怒りだ。」
「捨てることによって豊かになるものは?」
「欲だ。」
「世の中のもっとも不思議なことは?」
「毎日人は死んでいるのに、生きている人は自分だけは永久に生きるつもりでいることだ。」

 ユディシュティラはその声の質問に全て答えた。するとその声の主は正体を現した。なんと死界の王ヤマだった。ヤマは兄弟全員を生き返らせ、ユディシュティラにさらなる人徳の光を与えた。