◆戦争のルール◆
 『マハーバーラタ』を読む限り、その戦争はルール無用の悲惨な殺し合いではなく、むしろ健全なスポーツであった。少なくとも前半は。そのルールとは以下のようなものである。

●戦闘時間は日の出から日の入りまで。夜は両軍とも酒を飲み交わして親交を深めるべし。
●同じ条件の者同士戦うこと。騎兵は騎兵と、歩兵は歩兵と、戦車隊は戦車隊と、象兵は象兵と、同数の者同士で戦うこと。
●ヘソより下は攻撃してはならない。背面から攻撃してはならない。
●助命や降伏を申し出た者は殺さないこと。
●一騎打ちをしている者を第三者が殺さないこと。
●武器や鎧を失った者、よそ見をしている者、退却している者を殺さないこと。
●非戦闘員を殺さないこと。

 ところが、戦争が進むにつれて、この法規も次々と破られていくことになる。