◆ヤーダヴァ族の滅亡◆
 ドヴァーラカー城のクリシュナはクルクシェートラの戦いの後、36年間に渡ってヤーダヴァ族を統治した。しかし、その繁栄があまりに続いたため、人々は奢り高ぶり、放逸な生活を送るようになっていた。

 ある日ドヴァーラカーに数人の聖仙が訪れた。傲慢なヤーダヴァ族の人々は、一人の若者に女の格好をさせ、聖仙たちにふざけて質問した。

「この娘は男の子を産みますか?それとも女の子を産みますか?」

 怒った聖仙たちはヤーダヴァ族に呪いをかけた。

「この者は男の子でもなく、女の子でもなく、鉄の矛を産むだろう。そしてその矛のよってヤーダヴァ族は全滅するだろう。」

 次の日、その若者は本当に鉄の矛を産んだ。ヤーダヴァ族の人々は恐ろしくなって、その矛を粉々に砕いて海に捨てた。彼らはこれで安心していたが、やがてその海岸には草がびっしりと生えてきた。しかし彼らはすぐに聖仙の呪いを忘れてしまっていた。

 ある日、ヤーダヴァ族の人々はその海岸にピクニックへ行き、飲めや歌えの大騒ぎをした。そして酔いが回り始めるとケンカを始め、やがて大乱闘となってしまった。矛の粉から生えた草は一本一本が強力な矛となって、ヤーダヴァ族は身内同士で大量殺戮を始めた。こうしてヤーダヴァ族はとうとう全滅してしまった。

 この惨劇を見たクリシュナの兄バララーマは瞑想を始め、地上から去っていった。クリシュナも通りがかった猟師に誤って射られ、アキレス腱を切られて死んだ。